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自分自身の気持ちを上手く表現したい!
などの理由から、お気に入りの曲の歌詞をブログやFacebook、twitterに載せることがあります。
しかし、twitter に関しては日本音楽著作権協会(JASRAC)の常務理事が「歌詞をつぶやけば使用料が発生する」と発言しています。
本当に歌詞をつぶやくだけで使用料が発生するのでしょうか?
そこで、歌詞をブログなどに載せることと著作権法との関係について考えていくことにします。
1 歌詞は著作物といえるのか?
歌詞は「著作物」(著作権法2条1項1号)といえるのでしょうか。
一般的には、次のように考えられています。
“歌詞が楽曲と一体であると考えた場合:音楽の著作物(10条1項2号)となる歌詞だけを取り出した場合:言語の著作物(10条1項1号)となる ”
したがって、歌詞は「著作物」として著作権法で保護されることになります。
2 歌詞をブログに載せると著作権侵害になってしまうのか?
では、歌詞をブログやフェイスブックに掲載すると、歌詞の著作権を侵害してしまうのでしょうか。
歌詞をブログ等へ載せる方法としては、(1)歌詞を丸ごと全部載せる方法と(2)歌詞の一部を載せる方法の2つがあります。
そこで、この2つの場合を別々に検討していきます。
(1)歌詞を丸ごと全部載せる場合
twitter には140文字という文字数制限があります。ですので、歌詞を丸ごと載せることは難しいといえます。
したがって、ここではブログとFacebookに限定して検討します。
著作者には、著作物を複製(コピー)する権利(複製権)があります。
つまり、著作者以外の人は勝手に著作物をコピーすることはできず、仮に、勝手に著作物をコピーした場合には、複製権を侵害したことになります。
ここで、歌詞を丸ごとブログ等に載せる行為は、まさに歌詞をコピー・複製する行為に該当するといえます。
したがって歌詞の著作者の許諾がない限りは歌詞を勝手にブログに載せてしまうと、複製権侵害となってしまいます。
そこで、歌詞の著作権者から許諾をもらう必要があります。
多くの場合、JASRACに申請し許諾を得ることになるでしょう。
つまり、基本的に使用料を支払う必要があるということになります。
(2)歌詞の一部を載せる場合
では、歌詞の一部だけを載せる場合はどうでしょうか。
この場合は、ブログ、Facebook だけでなくtwitterも問題となるでしょう。
歌詞の一部とはいっても、一言だけを載せることもあれば、相当程度長く載せることも、ほぼ全部載せることもあると思います。
そこで、場合分けをして考えていきましょう。
(ア)一言だけを載せる場合
歌詞のサビのうち、わずか一言だけを載せる場合などは、原則として、「著作物」(2条1項1号)に該当しないといえます。
※その一言が、非常に独創的である場合などは「著作物」となる可能性もあります。
したがって、原則として自由に利用することができます。
(イ)一言を超える長さのフレーズを載せるとき
この場合は、原則として「著作物」に該当すると考えるべきです。
そして、「著作物」の一部をブログなどに載せるのですから、それが一部ではあるとはいえ、コピーをしていることには変わりありません。
しかし、著作権法には次のような条文(32条1項)があります。
公表された著作物は、引用して利用することができる。
その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。この条文は、「引用」であれば、著作物を利用することが許諾されると定めています。(なお、「引用」と認められなければ、原則として、使用料を支払う必要があります。)
そして、判例等をふまえて考えますと、
(ⅰ)引用する著作物と引用される著作物が明確に区別できること
(ⅱ)引用される著作物が主、引用する著作物が従の関係にあること
という2つの要件を満たした場合に、「引用」として認められることになります。
※なお、「引用」と認められるための詳しい要件については、
http://gvalaw.jp/it-copyright/archives/89.html をご参照ください。
では、この2つの要件を満たすためには、どうすればよいのでしょうか?
(ⅰ)明確区分性について
この要件を満たすためには、ブログに載せる歌詞をかっこで括るなどして、自分の文章と歌詞とを明確に区別できるようにする必要があります。
(ⅱ)主従関係について
この要件を満たすためには、歌詞はあくまでもサブで、ブログの文章自体がメインとなっている必要があります。
つまり、歌詞とブログの文章の量が重要となります。
また、引用した歌詞について自分の意見やコメントなどをつけることも大切です。
そして、(ⅰ)、(ⅱ)を満たした場合には原則として、使用料を支払う必要はないことになります。
3 まとめ
歌詞を全部まるごと載せる場合には、使用料が発生する可能性が高いです。
これに対して、ブログ等に載せる記事が一部であれば、使用料が発生する場合も発生しない場合もありえます。
歌詞を利用される場合には、以上の点に十分注意してください。
【執筆者】 弁護士 小鷹龍哉
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。