ベンチャーキャピタルとは?
GoogleやApple、Facebookなど世界的なベンチャー企業の躍進が報じられる際、必ずと言って名前が上がるのがベンチャーキャピタルです。一体、ベンチャーキャピタルとはどのようなものなのでしょうか?ベンチャーキャピタルの仕組みやビジネスについて解説します。
ベンチャーキャピタルとは?
ベンチャーキャピタルとは未上場のベンチャー企業に投資(※1)をし、その企業が成長した際に株式を売却することによってキャピタルゲイン(※2)を得るビジネスです。
※1:ベンチャー企業に「投資する」とは?…そのベンチャー企業の株式を購入することです。ベンチャー企業は株式を渡す代わりに資金を得ることとなります。また、株式を手に入れるということは、それと同時に会社法に基づく株主の諸々の権利を手に入れることになりますので、ベンチャーキャピタルは株主になると同時に経営に影響を持つようになります。(ベンチャーキャピタルがどの程度の権利を持つかは、発行株式の何%を得るかによって異なり、比率が高くなるほど権利が強くなります。)
※2:キャピタルゲイン…株式を売却した際に出る値上がり益です。逆に、売却した際に購入価格より株価が下落していれば損失が出ますが、その場合は「キャピタルロス」と呼ばれます。
プライベートエクイティファンドとベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、プライベートエクイティファンドの形態のひとつです。
プライベートエクイティファンドとは、未上場企業に投資を行いキャピタルゲインを得ることを目的とするビジネスです。プライベートエクイティファンドには、その投資対象によっていくつかの形態があり、その中でも「スタートアップ」や「ベンチャー企業」といった小規模であったり、創業間もなく急成長が見込めるような企業を投資対象としているものがベンチャーキャピタルと呼ばれます。
プライベートエクイティファンドの主な種類には下記のようなものが挙げられます。
- ベンチャーキャピタル:アーリーステージの企業(スタートアップ)やベンチャー企業に投資するファンド
- グロースファンド:成長過程にある、成長可能性の高い企業に投資するファンド
- バイアウトファンド:主に成熟した企業に投資するファンド
- 企業再生ファンド:経営危機にある企業や経営破綻した企業に投資するファンド 等
ベンチャーキャピタルの事業の流れ
ベンチャーキャピタルの事業は下記のような流れで行われます。
1:ファンド組成・投資資金集め(ファンドレイズ)
ベンチャーキャピタルが投資を行う場合、まずは資金が必要となりますので、ファンドを組成して投資資金を集めます。(ベンチャーキャピタルの事業はいきなり投資から始まると思っている方もおられるかもしれませんが、そうではありません。まずは投資を行うための資金集めから始まります。)
この資金集め(ファンドレイズ)は、資金の運用を考えている銀行や保険会社などの金融機関や事業会社といった機関投資家や個人投資家(経営者、超富裕層など大口で出資できる個人)に資金を出してもらうことになりますので、様々な機関投資家を訪問し、自社の投資実績(トラックレコード)を示し、投資資金を出してもらえるようプレゼンや交渉を行います。そのため、ベンチャー投資の世界では、実はベンチャーキャピタル自身も機関投資家から評価される立場でもあります。また、ベンチャーキャピタルはファンドを組成し管理することによってファンドの管理報酬を受け取りますので、普段はその管理報酬をもとに経費をまかなっています。
2:投資先企業の発掘(ソーシング/ファインディング)
ファンドの組成が完了すると、投資先となる企業探しを行います。各ベンチャーキャピタリストが人脈などを活用し、情報収集を行い、投資対象となりそうな企業にアプローチします。ベンチャーキャピタルによっては投資のターゲットとする業界や企業のステージを絞って投資を行うケースもあります。
3:投資審査
投資対象となる企業が見つかり、投資条件が合意できた場合、社内にて審査が行われます。(独立系のベンチャーキャピタルなど、パートナー個々人が決裁権を持っている場合などは、特に審査を行わないこともあります。)
4:投資実行
投資が決定すると資金の払込を行い株式を取得します。
5:投資先企業の支援(バリューアップ)
投資が完了するとベンチャーキャピタルは投資先企業の経営支援を行います。この支援の方法はベンチャーキャピタルによって異なり、キャピタリストが役員となってハンズオンで深く入り込んで支援する場ケースもあれば、サポートはするものの経営にあまり口を出さないケースもあるなど関与の度合いは様々です。ただし、取引先や提携先、また、従業員となる人材などを紹介するなど、投資先のバリューアップにつながるサポートを行うのは大前提であり、週1回や月1回など定例ミーティングを行ったり、定期的な経営レポートの提出をもとめ、投資先の現状把握はしっかりと行なっておくのが一般的です。
6:投資資金の回収(イグジット)
ベンチャーキャピタルは投資後、一定期間が経過すると株式を売却し、投資資金を回収します。基本的にはキャピタルゲインが最も大きくなる可能性が高いIPO(新規株式公開)での売却を目指しますが、投資先の状況によってM&Aによって売却したり、他のベンチャーキャピタルや株主に売却するようなケースもあります。
7:ファンドの解散
ベンチャーキャピタルが組成したファンドには満期がありますので、満期を迎えると投資家に出資金を返還します。(ファンドの満期は7~10年程度が目安です。)
ベンチャーキャピタルの特徴や違い
ベンチャーキャピタルは業界に詳しくない人から見ると、ベンチャーキャピタルはどれも同じように見え、特徴や違いがわかりにくいかと思います。ベンチャーキャピタルの違いはどのようなところに見られるのでしょうか?ここではベンチャーキャピタルの特徴が現れるいくつかのポイントについて説明します。
- パートナーやキャピタリストの経歴の違い
ベンチャーキャピタルを運営するパートナーやキャピタリストの経歴によって各ベンチャーキャピタルにも特徴が現れます。例えば、パートナーがどのような業界でどのような経験を積んでいるのかによって、投資対象とする企業や投資後の支援方針も異なってきます。
- 投資対象の違い(企業ステージ、業種、地域など)
ベンチャーキャピタルにはそれぞれ投資方針があり、企業のステージや業種、地域などテーマを設けて投資を行なっています。例えば、企業ステージであれば、シード、アーリー、ミドル、レイターなど、業種であれば、IT、製造業、バイオなど投資対象が絞りこまれていることもあります。また、地域であれば国内でも九州や東北といった地方に限定したファンドや、海外への投資を目的としたファンドなどもあります。
- 投資金額の違い
ベンチャーキャピタルではそれぞれの投資方針によって一度に投資する金額が異なります。シード投資やインキュベーションをメインとするベンチャーキャピタルのように、数百万円単位で投資を行うベンチャーキャピタルから、2,000万円~5,000万円程度、1億円以上など高額で投資するベンチャーキャピタルまで様々であり、投資金額にある程度の制限を設けています。
- シェアの違い
ベンチャーキャピタルは投資金額だけでなく、投資の際のシェア(持ち株比率)に関してもスタンスに違いがあります。その企業に投資しているベンチャーキャピタルの中での最大株主となるリードでの投資(マジョリティ投資)を基本とするベンチャーキャピタルや、シェアにはそれほどこだわらないベンチャーキャピタルなどがあります。
- 系列の違い
ベンチャーキャピタルは、独立系なのか、事業会社系なのか、金融機関系なのか、もしくは、政府系なのかなど、その系列やバックグラウンドの違いによっても特徴が現れます。独立系であればパートナーの投資方針が特徴として現れやすくなりますし、事業会社系であれば親会社やグループ会社とのシナジーを重視するなどの特徴があります。
- ファンド出資者の違い
ベンチャーキャピタルは、出資者によっても投資方針やスタイルに違いが生じるケースもあります。投資家がベンチャーキャピタルに出資する際の契約書に、投資対象を特定の業種に制限したり、出資金額や比率に制限がついているケースなどでは、ベンチャーキャピタルの投資方針にも影響がでるケースもあります。
- 出資するファンドの違い
ベンチャーキャピタルは複数のファンドを運営しているケースもあります。大手のベンチャーキャピタルの場合は、投資対象の業種や地域を絞るなど各ファンドにテーマを持たせて運営している場合もあり、ファンドの組成時期や満期も異なるため、同じベンチャーキャピタルからの投資でもどのファンドから投資するかによって投資条件やスタンスに違いが生じるケースもあります。