違法に動画をアップロードした場合の損害っていくら?

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近時は、動画がオンライン配信されるサービスが増えてきましたね。

ところで、インターネット上で、動画を違法にアップロードしたらどうなるでしょう?

 

「著作権侵害になるから許されない。」

その通りです。

 

最近では、動画の違法アップロードで逮捕されるケースも見られるようになりましたね。

 

また、著作権を侵害した場合、損害賠償請求を受けることもあります。

 

では、損害賠償の額はどの程度なのでしょう?

 

損害賠償の額は、侵害行為が著作権者に与えた損害の額によって決まります。

 

著作権侵害行為を行った場合に、著作権者にどれだけの損害を与えているのでしょうか。

 

「著作権侵害は許されない」ということの他に、相手にどれだけの損害を与えるかを知ることは重要です。

 

そこで今回は、「著作権侵害行為の先には、いくらの損害賠償が待っているのか?」ということについて、最近出た裁判例をご紹介したいと思います。

 

【東京地裁平成25年5月17日判決/平成25年(ワ)第1918号】

この事案は、総合格闘技競技である「Ultimate Fighting Championship」の試合を撮影した映像作品を、ニコ二コ動画にアップしたという事案です。

 

「よくある話、大した話じゃない」と思われる方もいるかもしれません。

残念ながら、確かにこのような問題は頻繁に生じてしまっています。

 

では、この事案で、裁判所がいくらの損害を認めたかを見てみましょう。

 

———————————————————————————–

原告の損害額は,具体的には次のとおりである。
 ア 作品A
   500円 × 1万3172回 × 60% = 395万1600円

イ 作品B

  500円 × 1万3999回 × 60% = 419万9700円
 ウ 作品C
   500円 × 6837回   × 60% = 205万1100円

 

上記のとおり、合計1020万2400円です。

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具体的に、この損害が、どうやって計算されたかについても見てみます。

結論を先取りすると、計算式は、「作品の販売価格 × ライセンス料率 × 再生回数」です。

 

事情は、以下のとおりです。

 

本件の作品(正規作品)は、インターネット配信業者を通じて有料で配信されており、ユーザーが試聴するには、500円の視聴料を、インターネット配信業者に支払うことになっていました。

 

そして、原告は、そのインターネット配信業者と契約を締結しており、配信による収益の60%をライセンス料として得ていたわけです。

 

つまり、原告はユーザーが1回作品を視聴すれば、

500円 × 60% = 300円

の利益を得ることができていたはずでした。

 

他方で、被告が違法アップロードした動画は、

作品Aにつき、1万3172回

作品Bにつき、1万3999回

作品Cにつき、6837回の再生回数が記録されていました。

 

違法アップロードされた動画がなければ、ユーザーは原告の正規作品を視聴したかもしれません。

 

つまり、著作権者である原告は、違法アップロードされた動画の再生回数だけ、ライセンス料を得られなくなってしまっていることになります。

 

本件では、このような事情によって、上記の計算式が適用され、損害が計算されています。(著作権法114条3項)

 

しかも、この裁判例では、財産上の損害だけが認定されましたが実は、著作権者の損害は、これだけに留まらない可能性があります。

 

他人の著作物を無断で利用した場合、著作権侵害とは別に、「著作人格権侵害による損害賠償」も併せて請求されることが一般的です。

 

この「著作人格権侵害による損害賠償」の請求は、精神的な損害の賠償(慰謝料)の請求であり、その算定は容易ではありません。

 

しかし従来の裁判例から見ると、その額は数万円~500万円の間で認められています。(特に、数十万円単位での損害が認められるケースが多いと思われます。)

 

著作権者には、財産上の損害に加えて、精神的な損害も発生することを覚えていてください。

 

さて、今回は、法律論は脇に置きながら、著作権侵害の損害を、具体的な事案を元に見てみました。

 

日本の損害賠償制度は、懲罰ではありません。

あくまで相手に生じた損害を回復させるための制度です。

 

つまり、今回ご紹介した事案では、著作権者には、1000万円以上の損害が生じたことを意味します。

「よくある」著作権侵害は、実はこれだけの被害を生んでいるのです。

 

相手に対する影響がなかなか見えにくい著作権侵害ですが、本件のような事案があることは、是非覚えて頂ければと思います。

【執筆者】 弁護士  小鷹龍哉

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

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