ウェブサービス提供者の責任が問われる時代
「2ちゃんねる」や「Youtube」「ニコニコ動画」などのウェブサービスにおいて、何か問題が起こると、必ずと言っていいほど取り沙汰される問題があります。
「ウェブサービス提供者の責任」です。
「2ちゃんねるの書き込みを利用した犯罪が起こった。」
「児童ポルノが投稿された。」
「著作権を侵害する動画がアップロードされた。」
こういった事件は後を絶ちません。
プリミティブに考えれば、これらの犯罪において、非難されるべきなのは直接そのような犯罪行為を行った者でしょう。ウェブサービスの提供者は、たまたま自社のサービスが悪用されてしまっただけ。しかし、ウェブサービスの提供者は、サービスの提供によって利益を得ています。犯罪に悪用されないような体制を整えるのも、サービス提供者しかできません。
このような事情から、
ウェブサービス上での問題については、ある程度そのサービス提供者の責任を認めよう
というのが、現在の法律の建前になっています。
では、サービス提供者が整えておくべき管理体制とはどのようなものでしょうか。今回は、著作権の観点から、ウェブサービスの提供者が整えておくべき管理体制を検討していこうと思います。
投稿コンテンツ型のウェブサービス
最も著作権の管理体制が問題となるのは、ユーザーがコンテンツを投稿する形のウェブサービスでしょう。このようなウェブサービスの代表例は「Youtube」や「ニコニコ動画」などで、現在のウェブサービスでは非常に一般的なものといえます。
このようなサービスにおいて、本来お金を払わないと視聴できないようなコンテンツがあれば、そのサイトの人気は高まり、利用者の増加によってウェブサービスの収益が上昇します。つまり、投稿コンテンツ型のウェブサービスにおいては、第三者の著作権侵害が発生し、それが放置される要素が揃っているのです。加えて、インターネットの匿名性から、著作権侵害のコンテンツをアップロードした者の責任を追及することは困難です。
したがって、ウェブサービスの提供者が責任を問われる場面は少なくないのです。
参考となる裁判例と、そこから得られるヒント
ウェブサービスの提供者が、どのような著作権管理体制を構築すべきかを考えるにあたって、参考になる裁判例があります。
それは、いわゆる「TVブレイク事件判決」(知財高裁平成22年9月8日)です。
この事件は、動画投稿系サイトにおいて、権利者の許可なくコンテンツがアップロードされていた場合の、サイトの運営者の責任が問題となった事案です。この事件では、サイト運営者が著作権侵害の主体であるかが争点となりました。
判決では、
- バナー広告、検索連動型広告によりサイト運営者は広告収入を得ていること
- 動画ファイル数と、運営者の利益額とは相関関係があること
- 投稿されている動画の約5割は著作権を侵害するものであること
- 権利者から削除要求があっても、そのコンテンツを直ちに削除しないこと
これらの理由などから、違法コンテンツを投稿するのはユーザーであるにもかかわらず、サイト運営者が著作権侵害の主体であると判断されました。ウェブサービスの提供者として対策できる点は、③と④でしょうか。なお、資金や人手が足りないことから著作権管理体制が構築できないことは、著作権侵害を免れる理由にはならない、ということは、この判決で明確に述べられています。
このように、ウェブサービスの提供者が損害賠償責任を問われることは現実に起こり得ます。
では、ウェブサービスの提供者はどの程度の著作権管理体制を構築すべきか。
次回はこの点について説明したいと思います。
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。