現在、多くの人が利用しているSNS。
「facebook」や「mixi」などのSNSを利用して、親しい友人との間でグループを作ったり、認証を受けた者しかアクセスすることができない個人ページを作成したりしている方も多いのではないでしょうか。
そのグループや個人ページのなかでついつい、他人の作品を勝手に使っていませんか?
人の作品を勝手に使ってしまうこと。
これはときに、著作権の侵害であると判断されてしまうおそれがあります。
閲覧できる人が家族や友人などに限定されているのだから問題ない。
というわけではありません!!
見る人が限定されていたとしても、著作権侵害となってしまう危険があるのです。
それでは、もう少し詳しく見ていきましょう。
1 公衆送信権の侵害!?
著作権者には、自分の作品をインターネットを通じて配信する権利が認められています(23条)。
この権利を公衆送信権といいます。
著作物については、原則として、著作権者の許可なく、勝手にインターネット配信することはできません。
作品を配信するためには、著作権者の許可が必要となります。
それでは、友人との間で作ったグループ内や、特定の者しか閲覧できないように設定した個人ページの中で、作品を勝手に使ってしまうことは、
公衆送信権の侵害となってしまうのでしょうか。
2 「公衆」に対する送信とは!?
公衆送信権とは、そのことば通り、「公衆」に「送信」する権利をいいます。
「公衆」とは、「不特定の者」や「特定多数の者」をいいます(2条5項)。
そうすると、作品を閲覧できる者を、ごく少数に限定していた場合には、「不特定」とも「特定多数」ともいえないとして、「公衆」にあたらないと単純に考えてしまいがちです。
しかし、インターネットの場合、そのように単純に結論を出してはいけない事情があります。
いわゆる「MYUTA事件」(東京地判平成19年5月25日)があるためです。
この事件は、あるクラウドサービスが公衆送信権侵害に該当するかが争われたものです。
このサービスは、ユーザーがクラウド上に音楽ファイルをアップロードするとそのファイルが携帯電話の「着うた」として再生できる形式に変換されその変換されたファイルをユーザーがダウンロードできるというものです。
そして、このサービスにおいては、「個人のパソコンに発行するアクセスキーと携帯電話固有のキーを紐づける」ことにより、データをアップロードした者のみがダウンロードできることとしていました。
しかし、裁判所は、このような場合でも「ユーザが所定の会員登録を済ませれば、誰でも利用できる」ことを理由に「公衆」に対してその音楽を送信していると判断したのです。
「ユーザが所定の会員登録を済ませれば、誰でも利用できる」ことを理由に「公衆」であることが認められるのであればき許諾SNSにおけるグループページや個人ページについても「公衆」であることが認められる可能性は否定できません。
3 結論
もちろん、この事件については他の事情も考慮されておりますのでインターネットの利用について一般的に妥当するとは必ずしもいえません。
しかし、実際の裁判でそのように判断されている以上、注意するに越したことはないでしょう。
結局、グループページや個人ページであったとしても他人の作品を使用するにあたっては、権利者の許諾を得て利用したり「引用」(著作権法32条)にあたる形で利用するなどインターネットにおける一般的なルールにしたがって他人の著作物を利用することが無難でしょう。
【執筆者】 弁護士 小鷹龍哉
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。