漫画著作権物語2 ~漫画喫茶と古本は敵なのか?~

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漫画著作権物語2 ~漫画喫茶と古本は敵なのか?~

 

前回の「漫画著作権物語1 ~漫画はどこまで保護される??~」(http://gvalaw.jp/it-copyright/archives/964.html)から、約1か月が経過しました。

 

その間にND漫画は、様々なドラマの末出版され、全国の書店だけでなく、全国の漫画喫茶の棚にも並び、多くのまんがファンの目に触れるようになりました。

 

しかし、漫画喫茶に並ぶという事は、ND漫画を購入しなくても、読む手段があることになります。

漫画喫茶は、ND漫画の売上を下げるかもしれません。

このような漫画喫茶は著作権法上違法になるのでしょうか?

 

今回は、この記事を読んでくださっている皆様であれば間違いなく一度は行った事のある漫画喫茶についてまず取り上げます(予告と違ってごめんなさい)。

1 漫画喫茶

著作権法は、貸与権、すなわち、著作物(ND漫画など)を人に貸す権利を著作権者に認めています。

 

「著作者は、その著作物…をその複製物…の貸与により公衆に提供する権利を専有する」(著作権法26条の3)

 

「専有する」というのは、その人だけ利用できるということで、その人以外が行うと違反となるという意味があります。

 

この規定によると、著作者に無断で、公衆(特定少数者以外の者)に著作物を貸す事は、著作権法違反となります。

 

なんだ、じゃあ漫画喫茶は違法なのか!?

 

と思われるかもしれません。しかし、ちょっと考えてみて下さい。

漫画喫茶を利用する客(特定少数者以外の者)は、漫画喫茶の店内でのみ漫画を読む事が出来ます。

これは、漫画を置いている美容院や飲食店と異なりません。

そういったお店も著作権法違反といわれると、まんがフリークとしてはなんだかなーってなると思います。

 

実際、著作権法も、ここまでは規制していません。

法律的には、貸与は、占有の移転を伴う必要があり、漫画喫茶内で漫画を読む事は、この占有の移転がないため、貸与にあたらない、と説明されます[i]

そうでないと、漫画を置いている美容院や飲食店など全て違法になってしまいます。

 

それでは、売上の減少分は、漫画家が泣きを見るのか!

お前はまんが好きじゃなかったのか!!

 

と思われるかもしれません。

実際、数人の漫画家さんからそのようなことを言われた事もあります。

 

しかし、漫画喫茶の存在で本当に売上が減少するのでしょうか?

私見ですが、私はそんなことはないと思っています。

 

漫画業界全体の冷え込みは、活字離れや人口の減少等様々な原因が考えられるため、漫画喫茶のみを直接の原因と考える事はできません。

反対に、漫画喫茶をきっかけに売上が増加する事も十分あると思います。

実際、漫画喫茶で不意に手に取った傑作をそのあとすぐに買いに走ることも私は少なくありません。

 

漫画が本当に好きな人は、好きな作品の売上を下げて続きが読めなくなるような、自分の首を絞める事を本当にするのでしょうか?

 

この部分はまだ議論が尽くされていないところだと思います。

色んな意見があると思います。

私自身勉強中の身ですので、ご意見ありましたらご指導いただけたらと思います。

2 古本

さて、漫画を読む手段として、BOOKOFFや、Amazonを利用した中古本販売店などから古本を買うというものがあります。

これらも新品を買わずともND漫画を読む手段を提供するという意味で、ND漫画の売上を減少させるかもしれません。

このような古本は違法になるのでしょうか?

 

著作権法は、譲渡権、すなわち、著作物を人に譲渡する権利を著作者等に認めています。

 

「著作者は、その著作物…をその原作品又は複製物…の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。」(著作権法26条の2第1項)

 

先ほども記載したとおり、「専有する」というのは、その人だけが利用できる、他者の利用を許さないということですので、この規定によると、著作者に無断でND漫画を誰かに譲渡(有償、無償を問わない)することは、著作権法違反となります。

 

ん?それでは、古本屋に漫画を売る事も、誰かに漫画をあげることも違法なの?

変じゃない?

と思われるかもしれません。

 

まさにその通り、変なんです。

この変だなーという気持ちを条文で解消したのが、著作権法26条の2第2項1号で、譲渡権の消尽といいます。

おおまかにいうと、一度適法に譲渡されたものであれば、譲渡権は消滅し、誰でも自由に譲渡できるようになる、と定められた規定です。

 

「前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。

一  前項に規定する権利を有する者…により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物」

(著作権法26条の2 第2項)

 

それでは、ここで一つ問題です

自分がKindleで買った漫画の電子データを、勝手に友達に売ってもよいのでしょうか?

紙の本であっても、電子データであっても違いはありません。

すなわち、一度適法に譲渡されたものであれば、譲渡権は消滅し、誰でも自由に譲渡できるようになります(譲渡権の消尽)。

でも、電子データでそんなことを許してしまったら、誰も新品で正規品を買わなくなるのではないか?という考えも浮かぶと思います。

みなさんならどのように考えますか?

 

Amazonさんも、やはりこの辺りはよく考えられています。

電子書籍関係については回を改めて記事にしますが、少しでも興味が湧いた方は

Amazon Kindleストア利用規約
(https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201014950)の「1.Kindleコンテンツ」

をお読み下さい。

 

これが読み取れるようになっていると、漫画著作権の理解が相当進んでいると思っていいと思います。

3 まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、一般に漫画の売上を減少させているといわれている漫画喫茶と古本に注目して漫画の著作権を掘り下げてみました。

「私は、好きな漫画は新品でしか買わないんだ!」という方もいらっしゃるかもしれません。それも凄く恰好いい考えです。

私は、色んな選択肢があることこそが大事なんじゃないかなーと思っています。

 

それではまた次回お会いしましょう。ではでは。

 

【執筆者】弁護士 山田邦明

 


[i] 店内での利用であっても、貸与にあたるという立場の方もいます。

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

キャピタリストナビの編集部です。ベンチャーキャピタルやPEファンド、IPO(新規株式公開)など、IPOやファンド業界、資本市場の様々なニュースや情報をお届けしています。

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