ユーザーからコンテンツを集めるビジネス
mixiやFacebookに代表されるようなSNSはもちろん、最近のベンチャーがリリースするWEBサービスはユーザーからのコンテンツを集めるものが非常に多いです。
ユーザーが作成したコンテンツに対しては原則としてユーザーに著作権が帰属します。
このユーザーに帰属した著作権をどう扱っていくかがWEBサービスの提供者にとっては、非常に重要です。現代社会で生み出されるコンテンツは、その内容自体に価値があることに加えて、コンテンツをまとめて別の見せ方をすることでまた新たな価値として再構成することができます。例えば、価値あるコンテンツをそのまま別の形で転載することや、ユーザーのコンテンツ群を20代OLというような括りでまとめると、また新たな見せ方ができるので、改めて単純な単発のコンテンツというものから再構築していると言えるでしょう。
mixiの利用問題とは?
2008年にmixiは次のように、利用規約の改訂を行う旨の公表をしました。
【1、ユーザーが日記などを投稿する場合、ユーザーはミクシィに対して、その情報を国内外で無償・非独占的に使用する(複製、上映、公衆送信、展示、頒布、翻訳、改変等を行う)権利を許諾するものとする。】
【2、ユーザーはミクシィに対し、著作者人格権を行使しない。】
この利用規約の改訂でユーザーからは大きな反発がありました。
「ユーザーの日記を、mixiが書籍化するのではないか」
「ユーザーの写真も、勝手に写真集にされるのではないか」
というような意見があったようです。
また、附則に次のような一文もありました。
【新規約施行前にユーザーが行った行為についても、新規約が適用される。】
こちらの一文により過去の日記まで利用されるのでないかと、さらに波紋がひろがりました。結局、mixiは、当初の利用規約の改訂案に修正を加えました。
修正後の新規約は次のようなものです。
【日記などの著作権、著作者人格権は創作したユーザーに帰属する。】
【ミクシィは日記などの情報を、サービスの円滑な提供や改良など必要な範囲内で使用できる。】
【ユーザーが設定している情報の公開の範囲を超える形では使用しない】
かなりユーザー寄りに変更がなされました。最初のmixi利用規約の改訂の公表で、株価が18%下がったようです。
今後、ビジネスを行うベンチャーが気を付けること
mixi利用規約の改訂事例から学ぶことは非常に多いです。少なくとも言えることは、mixiがユーザーに対して利用規約改訂の意図をきっちりと説明すれば、このような問題にはならなかったでしょう。ただ、mixiの日記をカテゴライズして本として出せれば、非常に魅力的なコンテンツとなりうるでしょう。単純にこの魅力的なコンテンツを捨てることはビジネスチャンスを逃すことになります。
今後、WEBサービスを行っていくベンチャー企業も、法的に著作権を利用できるように利用規約を整備するにとどまらず、ユーザーの反発を招かないような説明の仕方をすることが求められるでしょう。場合によっては、法的には権利をユーザーに帰属させた上で、2次利用をしたい場合に個別に同意を取るという運用をしなければならない場合もありえます。
単純に解決できる問題ではないですが、ユーザーからコンテンツを集めるベンチャー企業は問題意識は必ず頭に入れておかなければならないでしょう。
【執筆者】 弁護士 山本俊
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。