ここ最近、個人ブログを持つ人が増えてきました。このサイトをご覧の方の中にも、自身のブログをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、ブロガーには共通の悩みがあります。それは、「どうやって、ブログを充実させるか」です。
そのような悩みの解決策の1つが、
『YouTubeなどの面白い動画を、ブログでも見られるようにすること』
つまり、投稿動画を自分のブログに転載する という方法を利用することです。多くのブロガーに利用されている方法ですので、ご覧になったこともあるのではないかと思います。
今回は、この「投稿動画の転載」の法的問題について検討していきます。
【1】転載の方法
転載の方法は大きくわけて、次の2つに分類できます。
つまり、
- 投稿動画をダウンロードし、自身の管理するサーバにアップロードする方法
- 自身のブログに、当該動画のHTMLコードを埋め込む方法
の2つです。
1と2の方法に、どのような違いがあるかというと、
1については、
- 動画は、一度あなたのもとにダウンロードされ、それがあなたのブログにアップロードされる。
- 動画を見る人は、あなたのサーバ上のデータを見ることになる。
これに対して
2については、
- あなたはHTMLコードを貼るだけであり、動画が投稿サイトからダウンロードされることはない。
- 動画を見る人は、動画投稿サイトのサーバ上のデータを見ることになる。
という違いがあります。
今回は、1の動画をダウンロードした後、ブログにアップロードする場合について検討します。
2については、次回見ていくことにしましょう。
【2】法律上の問題点
(1)今回の問題点を検討するまえに
前提として、YouTubeなどの動画投稿サイトに投稿された動画が「著作物」であれば、その動画製作者は、「著作者」となります。
一般的に、動画投稿サイトに投稿される自主制作動画は、「著作物」にあたりますので、今回は、転載する動画には「著作者」がいるという前提で考えていきます。
そして、著作権法17条1項によれば、著作者には、著作物に対する著作権が認められているのです。
では、これをふまえて、1を検討していきましょう。
(2)1についての問題点
1は、投稿動画をダウンロードし、それを再度アップロードするという方法です。
(ア)ダウンロードの問題点
ダウンロードとは、投稿動画サイトのサーバから、あなたのパソコンへと投稿動画をコピーすることです。
さて、ここで、著作権法21条は、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」としています。
「複製」とは、コピーのことを意味しますので、ダウンロードのようなコピー行為は、まさに、著作権法の「複製」(著作権法21条)に該当します。
つまり、著作者のもつ複製権を侵害するおそれがあるのです。
もっとも、複製に該当した場合でも、直ちに違法となるわけではありません。
著作権法30条によると、
「著作権の目的となっている著作物は、
個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、
・・・その使用する者が複製することができる」
とされています。
この条文を簡単にいえば、
個人的な範囲内で使用する場合には、複製をすることが許されているのです。
しかし、今回の事例では、
ブログに転載することを予定しているのですから、多くの人に見せる目的であることは明らかであり、「個人的」な範囲ということは難しいでしょう。
以上より、投稿動画のダウンロードは、著作者の複製権を侵害します。
(イ)動画をアップロードする場合の問題点
ここでは、アップロードが問題になります。
あなたのブログを訪れた第三者が、ブログ上の投稿動画を見る際のことを考えてみましょう。
上でも書きましたが、動画の視聴者は、あなたのサーバ上にある動画のデータを見ることになるのです。
ここで、著作権法23条1項によると、
「著作者は、その著作物について、
公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。」
としています。
この条文を簡単にいうと、著作権者には、
- 情報を公衆にむけて送信することができる権利(公衆送信権) と
- ユーザが情報の送信を求めた場合にすぐ送信ができるように、
送信が可能な状態にしておく権利(送信可能化権)が認められているのです。
これを踏まえて、ブログの事例を考えると、ブログにダウンロードした動画をアップロードした場合、そのブログを見た人が、動画の再生ボタンをクリックすれば、動画が自動的に再生されるようにされています。
つまり、ユーザが送信を求めた場合にそなえて、ブロガーは、投稿動画を、送信可能な状態にしているのです。
したがって、ブログへのアップロードによって、送信可能化権を侵害しています。
【3】まとめ
長くなってしまいましたが、これまで見てきたように、1の方法をとると、著作者の 複製権・送信可能化権 を侵害してしまいます。
そこで、まずは、1の方法を用いないという選択肢を検討するべきでしょう。
どうしても、1の方法を用いる必要があるのであれば、手間はかかりますが、きちんと著作者から許諾を得なければなりません。
次回は、2の方法を検討します。
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。