2016年1月1日~12月31日までの監査法人IPOランキングをまとめました。
2016年のIPO、83件を担当した監査法人を『IPO件数』『時価総額』『騰落率』の3つの指標でまとめてあります。
IPO件数 -新日本監査法人が2年連続の首位!
まずはIPO件数でのランキングです。
IPO件数ランキング
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※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。
IPO件数ランキングでは、昨年トーマツから首位を奪取した新日本監査法人が2年連続の1位となっています。
2015年から2016年にかけては、IPOの総数が92件から83件に9件減っていますが、四大監査法人に関しては、
- 新日本監査法人:+2件
- 監査法人トーマツ:±0件
- あずさ監査法人:-9件
- PwCあらた監査法人:±0件
となっており、合計で7件のマイナスとなっています。
また、準大手監査法人を見てみると、
- 太陽監査法人:+5件
- 三優監査法人:±0件
- 仰星監査法人:+2件
- 東陽監査法人:-3件
- 優成監査法人:-2件
と合計で2件のプラスとなっており、また、太陽監査法人の実績は8件と、あずさ監査法人の13件との差がわずかとなってきています。
準大手監査法人は一昨年あたりから件数を伸ばしていますが、これは大手監査法人が近年はどこも人不足でIPO監査を積極的に受ける余力がそれほどない点も影響しているのかもしれません。
過去3年で新日本のシェアは10%アップ、あずさは12%のダウン
次にIPOの件数とシェアを過去3年分のデータで比較してみましょう。
四大監査法人のIPO件数とシェアを2014年から2016年で比較すると以下のとおりです。
まずは件数の変動から。
四大監査法人のIPO件数比較(3ヶ年比較)
2014年と2016年で比較するとそもそものIPOの総数は全体では6件のプラスとなっています。
四大監査法人の担当件数では、2014年の69件から2016年の67件へと、2件のマイナスとなっていますが、新日本監査法人は単独で10件のプラスとなっており勢いを感じさせます。
また、あずさ監査法人は9件のマイナス、監査法人トーマツは5件のマイナスと、ともに3年間では件数を落とす結果となっています。
次に四大監査法人のシェアを見てみましょう。
四大監査法人のシェア比較(3ヶ年比較)
シェアに関しては、新日本監査法人がシェアを伸ばした結果、全体の33.7%と約3分の1のシェアを占めるに至っています。
このIPO監査に関しては、監査契約を結んでから数年後にクライアントのIPOが実現されるため、現在の結果というのは数年前の顧客獲得活動が影響しているとも考えられます。
そのため、新日本監査法人に関しては、2011~2013年頃にベンチャー・スタートアップ業界が再び盛り上がりの兆しを見せ始めた時期の積極的な活動が実を結んでいるという見方もできるかもしれません。
時価総額(初値) -LINEの大型IPOによりPwCあらた監査法人がダントツの首位!
次に初値時価総額での比較です。
初値時価総額の合計額でのランキング
初値時価総額の合計では、LINE(初値時価総額:1,028,961百万円)のIPOを担当したPwCあらた監査法人がダントツでの1位となっています。
PwCあらた監査法人のIPO件数は2015年と2016年と2年連続で3件でしたが、2016年のLINE、バロックジャパンリミテッド(初値時価総額:67,456百万円)、2015年にはベルシステム24ホールディングス(初値時価総額108,046百万円)、デクセリアルズ(同97,650百万円)、ソネット・メディア・ネットワークス(15,065百万円)と比較的大型のIPO案件を担当してきています。
では、次に時価総額の平均(1件あたりの初値時価総額)ランキングを見てみましょう。
初値時価総額の平均額でのランキング
こちらに関しても、LINEを担当したPwCあらた監査法人がトップとなっています。
なお、LINEを除いた平均時価総額で計算すると、PwCあらた監査法人の平均時価総額は37,885百万円となり、同じくトップとなります。
また、IPO件数トップの新日本監査法人は、平均時価総額では5位となっていることから、小規模なIPO準備企業をしっかりと押さえて件数に結びつけていることがわかります。
初値騰落率 -東陽監査法人が1位!
では、最後に監査法人ごとの初値騰落率の平均を見てみましょう。
騰落率の平均(1件あたり騰落率)でのランキング
※騰落率の平均=騰落率の合計/IPO件数で算出しています。
初値騰落率の平均では、東陽監査法人(2件)が141.24%で1位、三優監査法人(3件)が134.97%で2位となっています。東陽監査法人のIPO件数はゼグエグループ(223.52%)、PR TIMES(58.95%)の2件でしたが、ゼグエグループの高い騰落率が平均を引き上げた結果となりました。
また、2016年のIPOでは公募価格割れは15件でしたが、平均が公募価格割れとなる監査法人はありませんでした。
2017年のIPOマーケット、監査法人の勢力図はどうなる?
IPO監査と言えば、数年前まではトーマツの代名詞でしたが、2年連続で新日本監査法人が1位となり、そのイメージも変わりつつあると言えます。
また、監査法人業界全体で見ると、人員不足の影響から、報酬の大きくない案件や手間のかかるベンチャー案件の監査は積極的には受けにくいという声も一部では漏れ聞こえてきます。現在の状況が続くと、法人の人的余力なども監査法人のIPO実績にさらに大きく影響を及ぼしてくることになるかもしれません。
2017年のIPOマーケットや監査法人ランキングはどのような結果になるでしょうか?公認会計士ナビでは継続してウォッチしていきます。
引用元:2016年・監査法人IPOランキング!新日本が2年連続の件数トップに!太陽があずさに迫る!【件数・時価総額・騰落率】|公認会計士ナビ