「このサイトはフリーソフトを紹介するサイトです。全てのソフトウェアを、無料でダウンロードすることが出来ます。」
インターネット上で、こんな言葉を目にしたことはないでしょうか?
今回は、このように手に入れた無料ソフトやオープンソースの著作権について説明します。
1 フリーウェアとシェアウェア
インターネットで入手できるソフトウェアには、無償のもの(フリーウェア)と有償のもの(シェアウェア)があります。
ご存知のように、このようなソフトウェアは、有料であろうが、無料であろうが、プログラムで構成されているものですね。
そして、法律は、プログラムに著作権が発生すると定めています。
(著作権法第10条第1項9号)。
つまり、フリーウェアに著作権がないわけではないのです。
そして、著作権がある以上、ダウンロードしたフリーウェアを勝手にコピーしたり、改変したりしてはいけないのが大原則です。
2 著作権は放棄されている?
しかし、そうは言ってもフリーウェアは、無償で使わせてくれるソフトウェアです。
著作物を、無償で提供するということは、ユーザーが、入手したソフトウェアをどれだけ複製しようと、あるいは、どんな風に使おうとユーザーの勝手だと言っているかのようですね。
そのため、「フリーウェアの著作権は放棄されている」と、考えるユーザーも多いようです。
確かに一見、著作権は放棄されているように思えます。
しかし、その考え方は誤った考えだというべきでしょう。
3 オープンソースの著作権
では、オープンソースの場合はどうでしょうか?
オープンソースとは、簡単に言うと「ソースコードが公に公開されていて、使用・改良等が許されているプログラム」というものです。
このオープンソースもまた、プログラムで構成されているもので著作権によって保護されるものです。
単に無償であるというのだけであれば、フリーウェアもオープンソースも変わりません。
しかし、フリーウェアとオープンソースとに間には一つ決定的な違いがあります。
それは、フリーウェアは、通常はソースコードを見ることができないのに対し、オープンソースは誰でも ソースコードを参照し、改良できるという点です。
このようにープンソースは、無償で使わせてくれるどころか誰でも ソースコードを参照し、改良することを許してくれています。
フリーウェア以上に、著作権は放棄されているように見えてしまいませんか?
実際、「オープンソースの著作権は放棄されている」と考えるユーザーも多く、オープンソースをそのままコピーして自分のもののように振る舞う事例さえ生じています。
確かに一見、オープンソースの著作権は放棄されているように思えます。
しかし、その考え方もまた、誤った考えだと思われます。
4 著作権者の立場に立って・・・
では、どう考えるべきなのでしょうか?
どうして著作権者は無償でソフトやソースコードを提供してくれるのでしょう?
これについては、著作権者の立場に立って考えてみましょう。
著作物を創り出すのは、とても大変な作業です。
そうやって作り上げた著作物を、著作権者は、簡単に手放すことはないのが通常です。
例えばある人は、フリーウェアでソフトのユーザー数を増やしてから有料版にアップデートするつもりかもしれません。
フリーウェアでユーザーが拡大した分、大きな収益が見込めるからです。
またある人は、オープンソースをよりよく改変してもらうことを期待するかもしれません。
元々ある著作物を改変したものは、その著作物の「二次的著作物」と呼ばれ元々の著作権者も「二次的著作物」の一部の権利者になれるからです(著作権法第28条)。
そうやって、ユーザーが改変した、よりよいソースコードに対して権利を持つことは著作権者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
したがって、単に無料で提供・公開しているからその権利を放棄していると考えるのは、急ぎ過ぎた考えだと思われます。
もちろん、そのような見返を一切求めることなくソフトウェアやソースコードを公開している方もいらっしゃいます。
しかし、そのような方でも、自らの著作権を「放棄」という形で簡単に手放すことは通常であれば、あまり考えられないと思われます。
したがって、フリーウェアやオープンソースについては、ユーザーの利用や改変を、一定の条件の下で許諾(ライセンス)しているだけだと考えるべきでしょう。
著作権は手放していないけれど、ただその権利の行使をしないと表明しているだけだという場合もあるかもしれません。
5 どのような行為を許諾している?
著作権者がフリーウェアやオープンソースについて、どのような行為を許してくれているかは、著作権者の意思によります。
そのため、多くのフリーウェアやオープンソースでは、「利用規約」などという形で、ユーザーがどのような行為をしてよいかを示しています。
フリーウェアやオープンソースを利用する際は、著作権者の意思を尊重して、必ず利用規約などを確認するようにして下さい。
【執筆者】 弁護士 藤江大輔
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。