著作物には手を加えられない?!(その1)

1 はじめに

日常生活では、既に誰かが作った著作物に触れる機会も多いですよね。

ビジネス感覚の優れた方であれば、そうした著作物について、「ここをもっとこうしたらいいのになぁー」とか「これをもっとうまく活用して・・・・」と、より良いアイディアを思いつくこともあるかもしれません。

 

既存のものを利用することにより、元々のものに付加価値をつけ、より価値のあるものを提供するというビジネスは、非常に合理的です。

 

しかし、気を付けないと、こうした行為は、著作権法に違反する可能性があるのです。

 

と、ここまでは、「そんなことは知ってるよ」という方も多いでしょう。

そんな方は、「複製権を侵害しないように気を付ければいけないんだよね」

という点も、もうお気付きかもしれません。

 

しかし、「著作者人格権を侵害しないように」という点はいかがでしょう?

実は、著作権法には、「著作者人格権」という、見落としてしまいがちな権利が認められています。

更に、この権利、実は非常に大きな力をもっているのです。

 

そこで、今回と次回の2回にわたって、この著作者人格権について取り上げ、権利侵害とならないために気を付けることが必要な点について説明したいと思います。

 

2 著作者人格権とは?

著作者人格権とは、著作者が著作物に関して有している人格的利益の保護を目的とする権利の総称のことです。

 

少し分かりにくいかもしれませんが、以下のように考えてみてください。

そもそも著作物は、「財産」だと考えられています。

確かに、著作物を利用したビジネスが一般的になっている今日では、その考え方は理解しやすいと思います。

 

しかし、著作者は、経済的価値だけを重視して著作物を創作しているわけではありません。

著作者は、自分の著作物に対して、こだわりや思い入れなどを当然にもっています。

 

著作権法は、このような経済的価値とは別のものも保護すべきだと考え、財産としての「著作権」とは別に、「著作者人格権」という権利を独立して認めたわけです(二元論と呼ばれる考え方です)。

つまり、著作者人格権は、著作者の「意思」を保護するための権利です。

 

3 既存著作物を利用する上で気を付けるべきことは?

さて、既存の著作物を利用する上で、気を付けなければならない著作者人格権の筆頭が「同一性保持権」という権利です。

 

これは、著作者の著作物及びその題号について、著作者の意思に反してこれらの変更、切除、その他の改変を受けないという権利のことです(著作権法20条1項)。

 

簡単にいうと、著作者が、勝手に自分の作品に変更を加えるなといえる権利です。

 

著作物が無断で変更されることによって精神的な苦痛を受けてしまう著作者を保護するための権利が同一性保持権なのです。

 

ここで、よく考えてみると、著作者が著作物にどのようなこだわりを持っているかは、外から見てもはっきり分かる訳ではなく、曖昧な部分があります。

しかし、そのような曖昧な部分をも保護するというのですから、同一性保持権というのは非常に強力な権利だと言えるでしょう。

 

更に、ここで注意しなければならないのは、同一性保持権は著作者が保有し続ける権利であるという点です。

 

もう少し具体的に説明しましょう。

同一性保持権をはじめとする著作者人格権は、著作者自身に帰属する権利です。

 

つまり、先ほどご説明した二元論をベースに考えると、財産は移転できても、人格は移転できないので、著作権自体が移転しても、同一性保持権は著作者が持ち続けることになります。

 

そのため、他者から著作権を譲り受けた人(=法律上の著作権者)であっても、その著作物に勝手に手を加えることはできません。

 

4 同一性保持権を侵害したら・・・・

では、同一性保持権を侵害したら、どうなってしまうのでしょうか?

同一性保持権侵害のリスクは、大きく言えば以下の3点です。

 

・      損害賠償請求を受けるリスク

・      侵害行為の差止め請求を受けるリスク

・      刑罰を科せられるリスク

 

どれも事業を行う側から見れば、とても怖いリスクです。

中でも、ビジネスを考える上で、最も気を付けなければならないのは、「侵害行為の差止め請求を受けるリスク」でしょう。

 

例えば、あなたが考えたビジネスモデルそのものが他人の同一性保持権を侵害するようなものだった場合、著作者の請求一つによって、ビジネス自体が停止してしまいかねません。

 

そんな、いつでも差し止めされてしまいかねないリスクを抱えた状態でビジネスを展開することは、事業活動が安定しないので非常に危険でしょう。

 

更に、ここで一つ指摘しておくと、職務上作成する著作物の著作者が法人となる場合は、法人に著作者人格権が帰属することになります(同法15条)。

 

個人の人格なら理解できるが、法人の人格というのは・・・・??

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際、法人が有する著作者人格権の侵害を理由とする損害賠償が認められた裁判例は、少なくありません。

 

この点については、当然議論もあるところですが、法人でも、「著作者人格権」という強力な権利を行使しうるという点はビジネスについて考える際においても有用な視点です。

 

5 どんな変更でもだめなのか?

今回は、著作者人格権と同一性保持権という分かりにくい権利について簡単に説明を加えさせていただきましたが、それだけで少し長くなってしまいました(^^;)

 

どんな場合に同一性保持権の侵害になるのか?

逆に、どんな改変であれば許されるのか?という点については、次回の執筆で、もう少し掘り下げてみたいと思います。

 

【執筆者】弁護士 宮地政和

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

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