サイト売買の現状と問題点
日本でのインターネットの普及によって、サイトは日々、増加しています。現在では、日本におけるサイトの数は2008年時点で約1兆個です。
このような状況で、サイトM&Aが頻繁に行われています。GVA法律事務所でもいくつかの買収案件に携わっています。 サイトM&A仲介を中心に行う専門サイトも存在します。
サイトを買収するにあたっては、法的な部分においては次の点が主に問題になります。
- サイトのサービス自体の違法性
- サイトを取り巻く契約関係
- サイトの利用規約
- サイトの広告周り
- サイト関連の著作権
- サイト売買の契約書作成
現状においてはサイト売買に対して弁護士を利用している場面は非常に少ないです。 理由としては、2つが考えられます。
一つは、サイト売買に詳しい弁護士が少ないこと
もう一つは、サイト売買の取引額が小さいことです。
ですが、ベンチャー企業にとって身近な問題であるサイト売買の際に、法律のエキスパートが必要だというニーズはあるようです。 本件では、サイトを買収するにあたって、気を付けるべき点を著作権の部分に絞って解説していきたいと思います。
そもそもサイト売買とは?
「サイト売買」とは、「サイトに含まれる権利義務や契約関係一切を対象とする売買契約」ということが通常です。ただ、会社によってはサイト自体が会社の事業のすべてであり、結局、会社自体の買収と同様の効果をもたらすことがあります。
すなわち、従業員との雇用関係や、取引先との契約、賃貸借契約、コンピュータ設備等もサイトとともに譲渡される場合もあります。アメリカでの買収はこのようなパターンが多いです。 よくニュースで取り上げられるフェイスブックやグーグルのアメリカベンチャー買収はこのパターンですね。
サイト売買は結局著作権の問題
コンテンツのプラットフォームを買収するときのみならず、通常のサイトの買収を行う場合にも著作権は切り離せない存在です。サイトの売買は下記の要素を譲渡されることで運営の引き継ぎ自体は完了されます。
- ソースコードを含むプログラム ・デザインやデータ ・画像や文章等のコンテンツ
しかし、著作権については別途の合意がないと、無断利用となります。
著作権法上の複製権(著作権法21条)の侵害となり、理論上は損害賠償請求と差し止め請求をされる恐れがあります。 著作権の譲渡についても黙示の合意があるとされる可能性もありますが、著作権については譲渡はされていないとなった場合は、損害賠償請求と差し止め請求という最悪の結末を迎えることになります。
第三者の著作権を侵害していないか?
ただサイトの売り手から著作権侵害を主張されることは現実問題として考えがたいでしょう。 しかし、サイトの売り手が第三者の著作権を侵害しているコンテンツを利用している場合は十分にありえます。また、売り手に「原則として著作権はコンテンツの創作者に帰属する」という法律の知識がない場合は、悪意なく第三者に帰属している著作物を譲渡される可能性があります。
このような場合は、第三者から著作権侵害に基づいて、損害賠償請求や差し止め請求が飛んでくる可能性があるため、非常に大きなリスクを抱えることになります。
サイト売買における著作権トラブルの防止法
このような著作権侵害のリスクを排除する方法としては次の2点に集約されます。
- 一点目は、デューデリジェンスという買収するサイトの著作権関係についての精査を行います。
- 二点目としては、契約書で「著作権の譲渡条項を入れたり」、「著作権の帰属について保証させる旨の条項を入れる」方法があります。
サイト売買を行う際は、このような著作権のみならず法的に重要なポイントは多数存在するので、法的なリスクを意識して買収をすべきであると言えるでしょう。