2022年は、ロシアのウクライナ侵攻の影響による物価高騰や円安、株価下落など様々な悪要因が重なり、上場を延期する企業も見られました。果たして2022年のプレーヤー実績はどのようになったのでしょうか?
2022年のIPO市場を、
- 上場市場
- 主幹事証券
- 監査法人
- 証券代行
ごとのIPO件数でまとめてみました。
本記事の目次
市場別IPO数ランキング
東証市場再編初年度は東証グロースがトップ
まずは市場別IPO数のランキングです。2022年は4月に東証再編が行われました。
再編初年度は、市場別IPO数ランキングはどのような動きになるのでしょうか。
まずは過去10年間の市場別IPO数ランキングです。
市場別IPO数ランキング
市場別IPO数ランキング1位は東証グロースです。
再編前の東証1部、東証2部、東証マザーズ、ジャスダックを除いた76件のうち、東証グロース市場がIPO総数に占める割合は、78.9%となりました。
ちなみに、東証グロース市場への上場基準の概要は、以下の通りです。
- 株主数が150人以上
- 流通株式数が1,000単位以上
- 流通株式時価総額が5億円以上
- 流通株式比率が25%以上
東証グロース市場は、東証プライムや東証スタンダードと異なり、収益基盤や財政状態の基準がないため、上場しやすく、人気の市場となっているようです。
主幹事証券別IPO数ランキング
SMBC日興が10年間で初の単独首位、野村は急落
次に主幹事証券別のIPOランキングを見てみましょう。
主幹事証券別IPO数ランキング
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※主幹事証券が複数ある場合は、各証券会社に1件ずつ集計しています。
主幹事証券別IPO数は、厳しい市況の中、SMBC日興証券が前年と同水準を維持して首位になりました。SMBC日興証券が単独首位となるのは、過去10年で初めての出来事です。
一方で、野村證券は2021年と比べて63.0%も減少し、5位に転落しています。
主幹事証券上位5社のIPO件数の推移
2013年と2022年を比較すると、主要5社のIPO総数は50件から80件へ1.7倍に増加しています。
他方、10年間の推移を見ると、野村證券1強時代から、SMBC日興証券、みずほ証券、大和証券、SBI証券が加わった5社による混戦状態が続いています。
また、2022年は証券会社ごとに明暗が別れ、順位がかなり変動しました。
監査法人別IPO数ランキング
太陽がトーマツと同着で2位へ浮上。あずさは4位へ
次に監査法人別にIPO件数を比較してみます。
監査法人別IPO数ランキング
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※2018年7月2日に太陽監査法人と優成監査法人が合併しています。2018年のIPOに関して、優成監査法人のIPO1件は2018年末時点の存続法人である太陽監査法人に含めて集計しています。
※個々の監査法人の実績に関しては、外国監査法人は個別の法人として取り扱い、提携監査法人の実績には含めずに集計しています。
IPO件数では、2018年からEY新日本監査法人が5年連続で首位をキープしています。
太陽監査法人は前年並みの件数をキープし、監査法人トーマツと同着の2位に浮上しました。また、あずさ監査法人はIPO件数が前年の半分以下に減少し、4位となっています。
監査法人の規模別で件数はどう変動したのか
次に2013年から2022年までの監査法人の規模別のIPO件数割合の10年間推移を見てみましょう。
監査法人の規模別のIPO件数割合
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※外国監査法人に関しては、国内の提携監査法人の規模に準じて分類し集計しています。(例:KPMG LLP、EY LLP→大手監査法人、BDO USA, LLP→準大手監査法人)
2022年は、四大監査法人の割合が51.6 %に減少しました。
かつてのIPO監査は、EY新日本、トーマツ、あずさの3法人による寡占状態でしたが、ここ数年、四大監査法人はIPO準備企業の受け入れをセーブしており、準大手監査法人や中小監査法人にクライアントが流れるという構図になっています。
そのため、四大監査法人としてのシェアは2018年を境に右肩下がりとなっており、今年は過去10年間で最も低くなっています。本記事では2013年以降のデータのみ集計していますが、おそらく過去最低のシェアとなっているのではないでしょうか。
また、今年は、準大手監査法人の伸びが鈍化している一方で、中小監査法人の割合は昨年と比べて倍増しています。これは、大手監査法人に続き、準大手もIPO監査を受嘱する余裕がなくなりつつあり、準大手から中小へとクライアントが流れているものと推測できます。
近年のIPOマーケットでは、証券会社も大手監査法人によるIPO監査にこだわらない姿勢を示しており、この傾向は今後も続くものと思われます。
証券代行別IPO数ランキング
三菱UFJ信託2年ぶりのトップ
次に、証券代行別IPO数ランキングをご紹介します。
証券代行別IPO数ランキング
証券代行は、2年ぶりに三菱UFJ信託銀行が1位となりました。
証券代行に関しては、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行の2強をみずほ信託銀行が追う形が続いています。2022年に関しては、三井住友信託銀行とみずほ信託銀行の差が縮まっています。
また、10年間の累計代行率を見ると、1位が三菱UFJ信託銀行43.0%、2位が三井住友信託銀行33.5%の順となっています。
2023年のIPO市場、昨年上場を回避した企業のラッシュが続くか!?
2022年は、物価高騰、円安、株価下落など様々な問題が起こりました。この不安定な状況は2023年も続くと考えられていますが、2022年にIPOを見送った企業が、2023年のIPOを目指す傾向になるのではないかと考えられます。
一体、2023年のIPOマーケットやランキングはどのような結果になるでしょうか?継続してウォッチしていきますので、ご期待ください。
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)
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<本記事の補足>
複数の証券取引所に同時上場の場合には、市場規模が大きいもののみカウント。東京証券取引所>名古屋証券取引所>札幌証券取引所>福岡証券取引所の順で優先しております。具体的には以下の銘柄です。
【上場日、社名、集計した市場(集計対象外とした市場)】2013/3/27、タマホーム、東証1部(福証)/2014/12/24、ヨシックス、ジャスダック(名証2部)/2014/5/22、東武住販、ジャスダック(福証Q-board)/2015/3/26、プラッツ、東証マザーズ(福証Q-board)/2015/6/25、メニコン、東証1部(名証1部)/2016/3/9、プラス、東証マザーズ(名証セントレックス)/2016/6/15、ホープ、東証マザーズ(福証Q-board)/2016/6/29、コメダホールディングス、東証1部(名証1部)/2016/10/25、九州旅客鉄道、東証1部(福証)/2016/11/22、WASHハウス、東証マザーズ(福証Q-board)/2017/2/10、安江工務店、ジャスダック(名証2部)/2017/3/23、グリーンズ、東証2部(名証2部)/2017/8/3、シェアリングテクノロジー、東証マザーズ(名証セントレックス)/2017/12/25、ABホテル、ジャスダック(名証2部)/2018/12/21、ポート、東証マザーズ(福証Q-board)/2018/12/21、テノ.ホールディングス、東証マザーズ(福証Q-board)/2019/2/27、東海ソフト、東証2部(名証2部)/2019/4/3、東名、東証マザーズ(名証セントレックス)/2019/10/18、浜木綿、ジャスダック(名証2部)/2019/10/18、ワシントンホテル、東証2部(名証2部)/2021/4/7、(株)ファブリカコミュニケーションズ、ジャスダック(名証2部)/2021/6/2、(株)メイホーホールディングス、東証マザーズ(名証セントレックス)/2021/9/2、メディア総研(株)、東証マザーズ(福証Q-board)/2021/10/8、日本エコシステム(株)、東証2部(名証2部)/2021/12/23、三和油化工業(株)、ジャスダック(名証2部)/2022/4/21、フルハシEPO(株)、東証スタンダード(名証メイン)
<免責事項>
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