
キャピタリストナビの毎年恒例「IPOランキング」です。
2022年は91件、2023年は96件、2024年は86件だったIPO総数は、2025年は65件となりました。
そのような状況の中、2025年の以下の項目はどのような推移を見せたのでしょうか。
- 市場
- 主幹事証券
- 監査法人
- 証券代行
それぞれについて、IPO件数を見ていきましょう。
本記事の目次
市場別IPO数ランキング
まずは市場別IPO数ランキングです。
2022年4月に東証再編が行われ、2025年は再編4年目となっています。
2025年のIPO総数は65件となり、2024年の86件から大きく減少しました。
その中でも、トップに輝いたのはやはり東証グロース市場。件数は41件でした。とはいえ、その件数は前年の64件から20件以上も減少。シェアは63.1%で、2024年の74.4%からは10ポイント以上低下。「IPO=グロース市場」という一極集中の傾向が緩和される結果となりました。
主幹事証券別IPO数ランキング
続いて、主幹事証券別IPO数ランキングです。
※クリックすると拡大します。
※主幹事証券が複数ある場合は、各証券会社に1件ずつ集計しています。
2024年は「SMBC日興証券の突出」と「2位以下の混戦」が特徴的でしたが、2025年はその構図が大きく崩れ、大手4社による横一線の激戦となりました。
その中でトップに立ったのは野村と大和。件数は14件で同数でした。昨年突出していたSMBC日興証券は、今年は13件に。前年から9件減少し、順位も3位に後退する結果となっています。4位のみずほ証券は12件でトップ3に肉薄。SBI証券は前年の12件から8件へと減少し、数年ぶりに2桁を割りました。
では、ここ数年で主幹事数が2桁を超えている5社のみを、グラフで見てみましょう。
2024年はSMBC日興証券が頭ひとつ抜けていましたが、2025年はその差が急速に縮まり、野村、大和、みずほにかなり近づきました。結果として、1位の野村・大和(14件)から4位のみずほ(12件)までが、わずか2件差の中にひしめいています。
IPO総数が前年から21件減少して65件へとなる逆風の中、大和証券は13件から14件へと、唯一件数を上昇させました。SBI証券は2023年の19件をピークに下降トレンドに入っています。
監査法人別IPO数ランキング
次に監査法人のIPOランキングを見てみましょう。
まずは監査法人ごとのIPO件数ランキングです。
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※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。
※記事の本文中では読みやすさを優先し「有限責任」の文字を除いた表記としてあります(例:〇〇有限責任監査法人→〇〇監査法人)。
2024年は準大手の太陽が初の首位を獲得し話題となりましたが、2025年はEY新日本が首位を奪還しました。件数は15件(前年は13件)で、IPO総数が減少する中、BIG4の中では唯一件数を伸ばしています。
昨年の王者である太陽は14件から7件へと半減したものの、順位は2位。一方で、BIG4の一角であるあずさは前年の10件から2件へと大きく減少しました。ランキングも9位まで後退しています。
続いて、監査法人の規模別のIPO件数割合です。
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※外国監査法人に関しては、国内の提携監査法人の規模に準じて分類し集計しています。(例:KPMG LLP、EY LLP→大手監査法人、BDO USA, LLP→準大手監査法人)
中小監査法人は、2021年の6.4%からそのシェアを着実に伸ばし、2024年には23.3%となっていました。2025年の動きが注目されましたが、拡大傾向は変わらず。前年から13.6ポイントも急増させ、36.9%に達しました。これはIPO市場全体の1/3以上を中小監査法人が担うようになったことを意味します。ランキングを見ても、ESネクスト(4件)、史彩(3件)、新月(3件)など、新興・中小法人が上位に名を連ねています。
他方、昨年は47.9%から50.0%と回復の兆しがあった大手監査法人のシェアは、過去最低の44.6%に。EY新日本は15件と気を吐きましたが、あずさ(10件→2件)やトーマツ(10件→6件)の減少が響き、大手全体としてはシェアを押し下げました。
かつて8割超(2016〜2018年頃)を占めていた寡占状態は、完全に崩れ去ったと言っていいでしょう。準大手もシェアを18.5%まで縮小させ、今や中小よりも低い占有率となっています。
証券代行別IPO数ランキング
最後に、証券代行別IPO数ランキングを紹介します。
昨年までの、三菱UFJ信託銀行と三井住友信託銀行の2強+みずほ信託銀行という構図は2025年も継続しています。
その中でも、三菱UFJ信託銀行は4年連続の首位。件数は33件で、IPO総数(65件)に占める割合は約50.8%と、過半数を超えました。
2強の1角である三井住友信託銀行は11件減少(約35%減)した20件で2位。前年のトップとの差は7件でしたが、2025年は13件と、差は拡大しています。
みずほ信託は11件で、今年も3位でした。2強をみずほが追う形は継続していますが、実質的にこの3社以外が入り込む余地がほとんどない、極めて寡占化が進んだ市場状況となっています。
2025年市場の概観と2026年への展望
2025年のIPO市場は、前年の86件から65件へと上場数が大きく落ち込み、非常に厳しい局面を迎えました。市場の内訳を見てみると、東証グロースへの一極集中が和らぐ兆しが見られたほか、主幹事証券では野村証券と大和証券がそれぞれ14件を手がけて首位を分け合っています。
監査業界ではEY新日本がトップの座を奪い返したものの、大手や準大手法人のシェアは縮小。中小監査法人の割合が36.9%にまで急増する大きな構造変化が見られました。一方、証券代行業務では三菱UFJ信託銀行が50%を超えるシェアを確保し、圧倒的な存在感を示しています。
この1年の動向を質的な側面から振り返ってみると、「オルツ社による不正会計」と「グロース市場における上場維持基準の厳格化」という2つのトピックが重要な意味をもちます。循環取引を用いたオルツ社の不正発覚は、今後のIPO監査や審査のハードルを一段と押し上げる要因になるでしょう。あわせて、グロース市場の改革案も正式に決定し、2030年からは「上場後5年で時価総額100億円以上」という厳しい基準が適用されることになりました。
IPOの総数は2023年に96件、2024年に86件、2025年には65件と、右肩下がりの傾向となっています。金利上昇といったマクロ経済の影響も無視できませんが、より本質的な要因は「小規模な上場案件」が投資家に敬遠されている点でしょう。前述の市場改革などを通じて上場時の時価総額が高まっていけば、市場の停滞感を打破するきっかけになるかもしれません。
また政府は「スタートアップ育成5か年計画」を掲げて支援を強化していますが、現時点では目に見える成果が出ているとは言い難い状況です。単なる件数の積み上げが正解ではありませんが、2026年以降のマーケットを活性化させるような、ポジティブな材料の出現が待たれます。
これらの状況は、IPOマーケットや監査法人ランキングにどのような影響を与えるでしょうか?キャピタリストナビでは継続してウォッチしていきます。
執筆:雨見 隠
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