Amazonの日本参入で市場はどう変わるか?

米Amazon社が10月、Kindleストアをオープンして、ついに日本に参入しました。

2012年11月19日には、Kindle Paper Whiteが発売されシェアの拡大を図っているようです。Apple社からはiPad-mini、Google社からはNexus7が発売され、小型タブレットの競争が激化する中、電子書籍の需要はより高まっていくことに疑いはないでしょう。

これに対して日本も負けてはいません。

2012年11月16日には、出版デジタル機構が電子書籍の配信を開始しました。この出版デジタル機構は「100万冊の電子化」を目標に掲げ、官民ファンドの産業革新機構が150億円を出資したことで話題を集めました。

「コンテンツ緊急電子化事業(緊デジ)」に基づいて、経産省が10億円の補助を行い、来年3月までに6万冊を新たに電子化する目標を掲げています。しかし、すでに以下のような指摘もなされています。

 

ようやく始動した電子書籍充実に向けた取り組みだが、課題も残っている。1つは電子化のスケジュールだ。同機構によれば、電子化の作業は全般に遅れ気味。ここへきて出版社からの申請数が急増しているものの、紙から電子への変換に時間がかかる高度なデータ形式での電子化を希望する出版社も多く、「6万冊より少なくなる可能性はある」(同機構)。

 魅力的な品ぞろえができるかどうかも課題だ。今回、配信を始めたのは講談社の自然科学系新書「ブルーバックス」シリーズ。1998年発行の「子どもにウケる科学手品77」などの既刊本だ。「多くの出版社はまだ様子見で、売れ筋とは言い難い本も少なくない」(関係者)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD150DO_V11C12A1TJ2000/

 

この理由としては、

「デジタル機構を通じて電子書籍を製作すると、製作費用が即請求されない代わりに、3年間はデジタル機構を通して電子書店に流通することになると言っていた。今はこの期間は交渉によって変更が可能なようだが、3年塩漬けは厳しい。こうした出版社の利害とJPO(日本出版インフラセンター[筆者注])の構想とのズレが原因で、仮申請では10万点近く集まっていたが、本申請ではほとんど手が挙がらなかったのではないか。ほかにも、著者などに了解をとる手間をかけられないという中小出版社も多いだろう」(出版社の営業担当)

http://blogos.com/article/49354/

 

という声も聞かれるようである。日本らしいというべきか。

一方、Kindleストアはというと、

 

キンドルストアの作品数は現時点で「5万点以上」。うち約1万5000点が漫画、約1万点が青空文庫などの無料作品で、有料の一般書は2万5000点程度にとどまる。100万点以上を扱う米国に比べ作品不足は否めないが、昨年にサービスを始めたドイツは当初2万5000点以上、フランスも同3万5000点以上で、友田部長は「絶対数を増やすことが目的ではない」と強調する。「読者が欲しい本を集めることを重視しており、売り上げランキングに入っている本を多くそろえるのが目標。発売時期も紙の書籍にできる限り近づけたい」。人気の新刊の品ぞろえを優先する一方、少部数でも息長く売れる「ロングテール」作品の充実には「時間がかかる」との見通しを示した。

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20121113-OYT8T00912.htm?from=osusume

 

両者ともに苦戦しているようですね。

楽天が電子書籍「kobo」の日本語書籍数を水増ししたことが問題になったことも記憶に新しいのではないのでしょうか。http://corp.rakuten.co.jp/newsrelease/2012/1026.html

それだけいかにシェアを拡大し、競合他社に打ち勝つべき重要な時期であるかということが伝わってきます。現時点において、Kindle Paper Whiteの売行きは予想を上回るほどに好調なようである。また、KindleアプリがAndroidやiOSで使用できることから互換性に優れるKindleにやや分がありそうである。

 

さて、このような中、kobo・サビニス社長は以下のように述べている。

市場が立ち上がって数年が経過すると、DRM(著作権保護技術)はどこかへ行ってしまうのではないか、と思っています。いくつかの出版社はすでに「DRMなんていらない」と言っていますし、そういった出版社は増えていくのではないでしょうか。どちらにしろ、そう長い話ではないでしょう。

http://www.asahi.com/digital/digitre/TKY201211150410.html

 

これが実現すれば機器をまたいで電子書籍が読めるようになり、消費者からすれば非常に便利です。

だが、はたして本当にそんな時代が近いのでしょうか。

衆議院解散前のものですが、

超党派国会議員大手出版社、作家らでつくる「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」(座長=中川正春衆院議員)は8日、電子書籍違法コピーに対抗するため、著作権に準じる著作隣接権を出版社に与える法制度の骨子案を発表した。」

「原稿や写真、デジタルデータなど紙や電子の出版物の素材となるものを、出版に必要な形に編集したものを「出版物等原版」と定義。原版の作成者に複製権送信可能化権、譲渡権、貸与権という四つの著作隣接権を与えるとしている。作家の著作権とは別の権利で、電子書籍の海賊版に対し、出版社が自ら訴訟を起こすことが可能になる。勉強会では26日に都内で公開シンポジウムを開いて幅広く意見を聞くとともに、文化庁とも協議し、著作権法の一部改正を目指す。」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121108-OYT1T01479.htm?from=ylist

などという提案もなされているようです。

そうそう簡単に著作権保護技術が取り払われるとは考え難いでしょう。 

これに関してもいくつか問題点があるため、GVA法律事務所でも解説をしております。

http://gvalaw.jp/it-copyright/archives/43.html

自分で本を裁断しデータ化する人が続出するなど長年電子書籍が待望されてきました。消費者の視点からすれば電子書籍の流通が活発化することについては、やっと来たかという気持ちではないでしょうか。それでも当面は,まだまだ各ハードウェアとプラットフォームがしのぎを削りあうことになるでしょうし、既得権益の争いは続くでしょう。

この既得権益の争いの中で、大元となる著作権をどのように集めていくかは非常に重要になります。あなたが著作者である場合は電子出版契約を締結する際は注意して契約書をチェックしなければなりません。(http://gvalaw.jp/it-copyright/archives/349.html

いずれにせよ今後、電子書籍の業界で著作権が大きなカギを握るのは間違いないでしょう。今後も動向を押さえていきたいと思います。

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

 

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