ウェブサービスの著作権管理体制Part.2 ~著作権侵害を理由とする損害賠償から免れるためには?~

前回のPart.1では、コンテンツ投稿型のウェブサービスにおいては、著作権管理体制の構築が必要であることを説明しました。

では、どの程度の管理体制を構築すべきか。今回は、この点について検討していきたいと思います。 

著作権侵害を理由とする損害賠償を回避するために

著作権を侵害した場合、権利者から損害賠償を請求されることがあります。そして、コンテンツ投稿型のウェブサービスの提供事業者も、この損害賠償責任を負担する可能性があることはPart.1で説明しました。しかし、サービスの提供事業者が、常に投稿されるコンテンツをチェックすべきとすることは厳しいでしょう。

 そこで、一定の要件の下、サービス提供事業者の責任を免除する法律があります。プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)です。

プロバイダ責任制限法が規定する要件とは

同法の3条1項は、以下のように規定されています。「特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、

これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。

一 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
二 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。」

この条文をコンテンツ投稿型のウェブサービスにおいて著作権侵害が生じた場合に置き替えて説明すると、以下のとおりになります。 

  1. ユーザーの投稿により著作権侵害が生じたとき
  2. そのサービスの提供事業者は、
  3. コンテンツを削除することが技術的に可能な場合であって

    (1)著作権侵害を知っていたか
    (2)著作権侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときでなければ

  4. 著作権侵害を受けた権利者に対する損害賠償責任を負わない
  5.  ただし、サービス提供事業者が著作権侵害の情報の発信者である場合は、損害賠償責任を負う

非常にざっくりした説明となりましたが、大体このようなことが規定されています。

損害賠償を免れるために

プロバイダ責任制限法による免責を得るためにはまず、サービス提供事業者が上記⑤の「発信者」と認定されることを避けなければなりません。

 Part.1で、「TVブレイク事件判決」を紹介しました。この事件では、サイト運営者が上記プロバイダ責任制限法の免責を受けられるかも争点となりましたが、裁判所がサイト運営者を著作権侵害の主体とした1~4とほぼ同じ理由により、サイト運営者は「発信者」であると認定されてしまいました。つまり、1~4のような事情が揃っているとまずプロバイダ責任制限法の免責はまず認められないでしょう。

また、これらの事情が揃っていなかったとしてもサービス提供者に、少なくとも上記③⑵の「著作権侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」は、免責は認められません。権利者からコンテンツを特定した削除申請があっても長期間その対応を放置していたなどの事情があれば少なくとも上記「相当の理由」はあると判断されてしまいます。

ウェブサービス提供事業者が著作権管理体制を講じる際に上記プロバイダ責任制限法の関係から気を付けるべきポイントとしては

  • 削除申請に対しては迅速に対応することと
  • 違法コンテンツがある場合は放置せずに発見次第削除し、自社サービスにおいて違法コンテンツがあふれないようにする

といった点が重要になるように思われます。なお、コンテンツの削除をすることによりコンテンツの投稿者から損害賠償請求がなされる可能性があり、この請求に対して免責を受ける手続もプロバイダ責任制限法に規定されていますがこの点についての解説は別の機会に説明することとします。

次回のPart.3では、著作権管理体制におけるジャスラックとの関係について、説明したいと思います。

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

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