Part.1では、「まとめ、比較系サイト」が著作権侵害を回避するため利用できそうな著作権の制限の規定として
- 引用(32条1項)
- 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(46条の6)
この2つが考えられると述べました。
そして、前回のPart.2では、このうち 1.引用 について検討しました。
そこで今回は、2.送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等(46条の6)について、検討していきたいと思います。
検索等のための複製等とは?
著作権法46条の6は、以下のように規定しています。
公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号(自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。以下この条において同じ。)を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従って行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物(当該著作物に係る自動公衆送信について受信者を識別するための情報の入力を求めることその他の受信を制限するための手段が講じられている場合にあっては、当該自動公衆送信の受信について当該手段を講じた者の承諾を得たものに限る。)について、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物(当該著作物に係る当該二次的著作物の複製物を含む。以下この条において「検索結果提供用記録」という。)のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができる。
ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであること(国外で行われた送信可能化にあっては、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものであること)を知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行つてはならない。
… 読む気になりませんね。
この条文を分解すると、これは
1.公衆からの求めに応じて
2.公開されているウェブページのコンテンツの
3.URLを検索し、その結果を提供することを
4.業として(反復継続して)行う者が、
5.政令に定める基準に従い、公開されているコンテンツの収集、整理及び提供を行う場合、
【政令に定める基準】 ⑴ 公開されているコンテンツの収集、整理及び提供をプログラムにより自動で(つまり、ロボット型で)行うこと ⑵ 収集禁止措置(robot.txtによるか、ロボット検索防止タグをコンテンツに記載すること)がとられた情報の収集を行わないこと ⑶ 既に収集した情報に収集禁止措置がとられたものがあるときは、その情報を消去すること |
6.検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度で
7.送信可能化された著作物について(パスワードがなければ入れない会員限定サイト等は不可)
8.他サイトのコンテンツのコピー、加工、および公衆の求めに応じる検索結果の提供(URLと共に提供する場合に限る。)をすること
ができるということを規定しています。
ただし、
9.著作権侵害を知ったときは、その後は当該検索結果の提供を行わないこと
に注意が必要です。
なお、法律の規定上は、「ウェブサイトへの誘導をもっぱらの目的とすること」は要請されているようには見えませんから、検索結果を提供しつつ、自社のコンテンツを提供することは許されるように思われます。
検索等のための複製等を利用する場合の注意点
「まとめ・比較系サイト」にとってハードルになりそうなのは、
6.検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度にとどめること
でしょうか。
これは現段階で特にルールがなく、今後の解釈にゆだねられているところです。
グーグルやヤフーの検索結果と大きく異ならないのであれば、「まとめ・比較系サイト」において収集した情報を利用することに問題はないかと思われます。
一方、あまりに多くの情報を検索結果として表示することは許されません。
表示された検索結果があれば、実質的にリンク先に行かなくても良い程度にまで情報を表示してしまうと、検索等のための複製等としては許されないでしょう。
“ただ乗り”が許される場合とは
これまで3回にわたって「まとめ・比較系サイト」について検討してきましたが、Part.1で述べたとおり、無許諾で他サイトのコンテンツを利用することは原則として違法となります。
「まとめ・比較系サイト」にとって利用できそうな著作権の制限も、「引用」や「検索等のための複製等」くらいです。
やはり利用の条件や利用の仕方は限られてしまいます。
さらにいえば、著作権とはやや離れますが、「まとめ・比較系サイト」についてはコンテンツを取得する元のサイトの経済的利益を考慮する必要があります。
例えば、元のサイトが有料会員にならなければランキング検索やお気に入りの保存ができないサービスを提供しているのに、他サイトにおいて無料でそのようなことができてしまえば、元サイトの収益モデルは崩れてしまいます。
こうなったら、元サイトは黙っていないでしょう。著作権法的に対処ができなくとも、そのサイトを経由するアクセスを禁止するなどの技術的措置を講ずる可能性もあります。こうなってしまうと、サイトとしての価値もなくなってしまいます。
「まとめ・比較系サイト」のサービスを始めるにあたっては、著作権法のみならず、元サイトの収益モデルを害しないようなビジネスモデルを構築する必要があります。
結局、“ただ乗り”という利益を正当に得るためには、やはりそれ相応のハードルがある、ということになりそうです。
【執筆者】 弁護士 渡辺泰央
※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。