本稿は、毎年恒例となっているキャピタリストナビの「IPOランキング」記事です。2024年のIPO件数を、市場別、主幹事証券別、監査法人別、証券代行別に集計しました。
IPO総数は、2022年は91件、2023年は96件と堅調に推移しており、今年は何件になるのか注目を集めていましたが、結果的には86件と前年から約1割の減少となりました。
それでは、
- 市場
- 主幹事証券
- 監査法人
- 証券代行
ごとに、IPO件数をみていきましょう。
本記事の目次
2022年4月に東証の市場再編があったため、2023年が再編後の市場が初めて通期で運用された年となっています。
市場別IPO数ランキング
3年連続で東証グロースがトップ
まずは市場別IPO数のランキングです。
2022年4月に東証再編が行われ、今年は再編3年目です。市場別IPO数ランキングはどのような動きになるのでしょうか。
以下が過去12年間の市場別IPO数ランキングです。
市場別IPO数ランキング
市場別IPO数ランキング1位は東証グロース市場です。2位の東証スタンダード市場は前年比43.5%の減少(23件→13件)となりました。東証グロース市場がIPO総数に占める割合は、74.4%となり、2023年の68.8%から5.6%増加しました。新興企業向け市場である東証グロース市場は、根強い人気があるようです。
一方で、市場再編前の2021年のIPO総数に占める東証2部の割合は6.4%であるのに対して、再編後の東証スタンダード(再編前の東証2部を含む)のIPO総数に占める割合は、2022年が14.3%、2023年が24.0%、2024年が15.1%と、上場割合は増加している傾向にあります。
市場再編前はほとんどの企業が新興企業向け市場を目指していたわけですが、市場再編により流通株式数などの要件を充たしている企業は東証スタンダード市場へと上場しているようです。各市場のコンセプトが明確になったこと、再編後は市場区分を変更する際は新規上場基準と同じ審査を受けなければならないことなどが影響しているものと推測されます。
主幹事証券別IPO数ランキング
SMBC日興が2年ぶりの首位
次に主幹事証券別のIPOランキングを見てみましょう。
主幹事証券別IPO数ランキング
※クリックすると拡大します。
※主幹事証券が複数ある場合は、各証券会社に1件ずつ集計しています。
2024年の主幹事証券別IPO数は、1位のSMBC日興が突出する結果となりました(22件)。2位のみずほ・野村から、5位のSBIまでは差が3件しかなく混戦状態となっています。
主幹事証券上位5社のIPO件数の推移
ここ数年で主幹事数が2桁を超えている5社をグラフにしました。12年間の推移を見てみると、野村證券一強時代から、現在はSMBC日興証券、みずほ証券、大和証券、SBI証券が加わった5社による混戦状態が続いていることがわかります。
監査法人別IPO数ランキング
調査史上初!BIG4以外が1位を獲得
次に監査法人のIPOランキングを見てみましょう。
まずは監査法人ごとのIPO件数のランキングです。
監査法人ごとのIPO件数ランキング
※クリックすると拡大します。
※鞍替え、指定替え、TOKYO PRO MARKETを含まないランキングです。
※記事の本文中では読みやすさを優先し「有限責任」の文字を除いた表記としてあります(例:〇〇有限責任監査法人→〇〇監査法人)。
2022年から2023年にかけて5件増加していたIPOの総数は、2024年に86件と前年比10件の減少となりました。
そしてなんと2024年のIPO件数1位に輝いたのは、太陽有限責任監査法人です。2022年は2位、2023年は3位でしたが、今年念願の首位になりました!準大手がトップとなるのは、キャピタリストナビが集計を始めた2013年から始めての出来事です。
シェアを下げていた大手がわずかに回復。要因は?
次に監査法人の規模別IPO件数割合の12年間の推移を見てみましょう。
監査法人の規模別IPO件数割合
※クリックすると拡大します。
※外国監査法人に関しては、国内の提携監査法人の規模に準じて分類し集計しています。(例:KPMG LLP、EY LLP→大手監査法人、BDO USA, LLP→準大手監査法人)
元々大手監査法人のシェアは2017年を除き8割超の水準で推移していたものの、2018年の86.7%をピークにその割合は低下。その分、準大手と中小は共に存在感を増していました。
しかし2023年から2024年にかけては大手が47.9%から50.0%と微増しています。中小も16.7%から23.3%と躍進しました。その分シェアを落としているのが準大手です。
「2024年 監査法人IPOランキング」の詳細については、キャピタリストナビを運営しているワイズアライアンス社が同じく運営している公認会計士ナビの記事もご覧ください。
2024年 監査法人IPOランキング 12年間で初!IPO件数1位はあの準大手法人に。BIG4のシェアはどうなった?【件数・シェア・時価総額】 | 公認会計士ナビ 会計士・監査法人専門WEBメディア |
証券代行別IPO数ランキング
三菱UFJ信託3年連続のトップ
次に、証券代行別IPO数ランキングをご紹介します。
証券代行別IPO数ランキング
証券代行は3年連続で三菱UFJ信託銀行が1位となりました。
証券代行に関しては、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行の2強をみずほ信託銀行が追う形が続いています。
また、12年間合計のシェアを見ると、1位が三菱UFJ信託銀行44.0%、2位が三井住友信託銀行34.1%の順となっています。
時価総額など、グロース市場の上場維持基準引き上げ!?2025年IPOへの影響は
2024年のIPO件数は、前年より10件少ない86件となりました。2024年は、歴史的な株高を追い風に大型上場が目立つ一方で、新興企業や中小企業が上場を控えたと見られています。
一方で、東証がグロース市場の株価指数が低迷していることを受けて、上場維持基準の引き上げを検討しており、実現すれば2025年以降のIPO件数にも影響を与えそうです。
また、2024年から大手監査法人がIPO準備に力を入れ始めています。あずさ監査法人は2024年1月に「IPO統轄部」を設置。トーマツは2024年6月に「IPO監査事業部」を立ち上げ、EY新日本も全ての監査事業部においてIPOグループを組成すると共にIPO業務を統括する部署(企業成長サポートセンター)を設けています。監査法人各社がIPOに様々な角度から注力することが窺われます。これらの動きがIPOをしようとする会社に影響を与える可能性も否定できません。
果たして2025年のIPO動向はどうなるのでしょうか。引き続き注目です。
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著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧