インターネット・オークションにおける海賊版 ~もし海賊版が出品されていたら、権利者は何を請求できるのか~

最近では、著作物の不正コピー製品、いわゆる「海賊版」がインターネット・オークションサイトで発見される場合が多くなっています。海賊版は企業が本来得るべき利益を奪うばかりか、新たな創作物を作り出そうという意欲を減退させてしまいます。

まして,インターネット・オークションサイトでは、

  1. ネットワークを介して被害が拡大しやすい
  2. 発信者の秘匿性が高く、被害の回復が難しい

という特徴があるため、その危険は高いといえます。

もっとも、インターネット・オークションサイトで自社製品の海賊版が出品されている場合でも、権利者として適切に対応することで,侵害の予防や被害の回復・拡大防止ができる場合があります。

そこで、今回はインターネット・オークションサイトで自社製品の海賊版を発見した場合の対策について説明していきたいと思います。

第1 出品者(情報発信者)が判明している場合の対処法

出品者の詳細が判明している場合には、その出品者に対して出品情報の削除請求損害賠償請求をすることが考えられます。

しかし、インターネット・オークションサイトに海賊版を出品する者は、大抵の場合、匿名や変名を用いて出品するため、権利者は出品者を直接補足することはできません。そのため、個別の出品者に対して差止請求などをすることは難しいと言わざるをえません。

第2 インターネット・オークションサイト運営者(主催者)に何か請求できないか

そこで、インターネット・オークションサイトを運営する主催者に対して何らかの法的措置を行うことが考えられます。

この主催者に対する請求について規定するのが、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」、通称「プロバイダ責任制限法」です。

では、どのような場合に、どのような法的措置を主催者に対して行うことができるのでしょうか。

第3 主催者に対する侵害情報の削除請求

まず、オークションサイトを経営する主催者に対して、著作権に基づき、自社の著作権を侵害する情報の削除を請求することが考えられます。具体的には、出品情報の削除請求になります。

この請求の方法としては、裁判所を利用する仮処分も考えられますが、裁判所を経由せず直接主催者に対してメールや郵便により請求することもできます。メールや郵便により請求する場合における記載事項や添付資料について、詳しくはプロバイダ責任制限法著作権関係ガイドラインをご参照ください。

第4 主催者に対する損害賠償請求

次に、主催者に対して損害賠償を請求することが考えられます。しかしこの場合、プロバイダ責任制限法を考慮する必要があります。なぜなら、同法は主催者の損害賠償責任を制限しているからです。

プロバイダ責任制限法 3 条 1 項によると、

主催者自身が、インターネット・オークションサイトに出品された商品が権利侵害品であることを既に「知っていた場合」、又は、「知ることができたと認める足りる相当の理由がある場合」でなければ、主催者に対して損害賠償請求をすることはできないとされているからです。

上記の要件を満たすためには、原則として主催者に郵便やメールで侵害の事実を通知する必要があるでしょう。損害賠償請求をしても、主催者に「知らなかった。」と言われ責任逃れが生じる可能性があるためです。

この通知にもかかわらず,第3に記載した削除など主催者が何らの対応も行わなかった場合に,損害賠償が現実的なものとなります。

第5 主催者に対する出品者情報開示請求

最後に、主催者に対して海賊版を出品した発信者の情報の開示請求をすることが考えられます。

プロバイダ責任制限法によれば、出品者情報の開示を求めるためには、以下の2つの要件が必要となります。

  1. 権利侵害が明白であること
  2. 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること (4条1項)

この請求の方法としては、裁判所を利用する方法(仮処分・訴訟)もありますが、裁判所を経由せず直接主催者に対してメールや郵便により請求することもできます。

メールや郵便により請求する場合における記載事項や添付資料について,詳しくは,プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドラインをご参照ください。

なお、発信者情報の開示を受けた権利者が、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為は禁じられています(4条3項)ので注意が必要です。

 

今回は、サービス事業者に対する損害賠償請求、侵害情報の削除請求、出品者情報開示請求についてみていきました。

では、権利者から請求を受けたサービス事業者は、それらの請求に対してどのように対応していけばよいか。この点については著作権管理体制の項目でご説明していきたいと思います。

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

 

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